10/06/2010 移民法 裏話
移民法は、他の法律分野に比べ、非常に政治状況に左右されやすい。米国の景気の悪化が続いている現在、アメリカ政府は、少なくとも移民法上は外国人労働者の流入を歓迎していない。アメリカにおいてアメリカ人の雇用を増やす立場にある日本(外国)人労働者に対して不親切な対応をする事は、経済的な観点から考えると両国にとって好ましくない事であるにも関わらず、残念ながら物事を単純に考えすぎる傾向にありがちなアメリカの移民局係員(並びその他の政府機関)はとりあえず「外国人」のアメリカ在住を難しくする傾向が強くなっている。

例えば、H1-Bビザは、米国企業やアメリカ人雇用者の為に作られたカテゴリーのビザである。米国企業がレベルの高い大卒のプロを国内で雇う事に苦戦をしていた時があり、それらの企業の要望に応える為にアメリカ政府は大卒レベルの人材を他の国から呼び寄せる為のビザカテゴリーを作成した。しかしながら、現在、仕事がみつからないアメリカ人従業員にとっては、H1-B所有の外国人は「迷惑」な存在である。現在のH1-Bの認可状況をみると、移民局はありとあらゆる理由で申請を却下しようとする。ビザを申請すると、性質の悪い追加情報の要請が送られてくる頻度が増えている。その為、ビザの申請に対応する費用があがるので、ビジネスにとっては大きな負担である。追加情報の要請の内容を見ると、不合理な理由で却下をしようとしている嫌がらせに等しい対応だと思う。

移民法は政治状況に左右されやすい分野であるが故に、毎年、あるいは毎月のように移民局の審査基準が変わる事がある。例えば、昨年末から今年の初めにかけて、移民局のカリフォルニア ・ サービス ・ センターから問題が多発した。以前は問題なく受け入れられていた証拠書類が突然、受け入れられなくなったり、証明の基準が高くなったりした。これは、規定自体が変わったのではなく、規定を宛がう審査官の姿勢が変わったに過ぎない。これを理由に、普通は認可されるべくビザ申請に対し、却下が多発した。移民法弁護士が、特別会議を設け「ノーの文化」にどう対処するべくか話あったり、今まで30年移民法を専門にしてきた弁護士数人が、引退を考えたりする場面もあった。幸いに、その後、連邦政府がカリフォルニア ・ サービス ・ センターの幹部役員二人を左遷命令し、状況は少し緩和している。日本国内でも、以前よりアメリカに興味を持つ若者が減る一方、両国の交流が減るのは、両国にとってよくない。世界の政治状況に強い興味を持つ自分は、アメリカの移民法をここ10年ほど観察しているが、徐徐に悪化していく政治状況に、危機を感じている。 筆者:永野綾子