エステート・プランニングの目的

エステート・プランニングの目的

エステート・プランを作成する場合に、皆様の状況に応じてそれぞれ違った関心事があると思います。一般的には「様々な事項を整理して、他界時や障害者になった時に備えて包括的なプランを作成したい。」などの目的が多いようです。具体的に、いくつかの例を以下に挙げてみました。

事前医療介護指示書(Advance Health Care Directive)により、生きている間の健康管理

  • 自分で自分の健康管理ができなくなった場合、管理を信用できる人に任せる。

  • 延命処置など医療処置によって無意味に自分を延命させないように手配する。

委任状(Durable Power of Attorney)により、生きている間の資産管理

  • 自分で自分のお金の管理ができなくなった場合、管理を信用できる人に任せる。

  • 障害者になった時、財産管理人制度を回避したい。

遺言書(will)による、他界してからの資産管理

  • 配偶者を守り、贈与を明確にしたい。

  • 子供達を守り、贈与を明確にしたい。

  • 子供が障害者になった場合や、特別な介護を必要とする医療障害、学習障害になった場合に備えたい。

  • 離婚した場合に備えて子供の相続権を守りたい。

  • 残された配偶者の再婚時に子供の相続権を守りたい。

  • 孫達を守り、贈与を明確にしたい。

  • 家族の一員の相続権を無効にしたい。

  • 他界時に慈善目的で財産の寄付をしたい。

  • 自分が他界後、遺言書に対する異議申し立てやその他の争いを回避したい。 

遺言書と信託(a will and a trust)による、他界してからの資産管理

  • 上記、遺言書でできる事すべて、プラス:

  • 相続税を最小限に抑えたい。

  • プロベート(遺産相続検認手続き)を回避したい。

  • 自分が他界後、相続手続き費用を最小限に留めたい。

  • 資産を裁判や債権者から守りたい。

  • 障害者になった時や他界した時に、競合他社、略奪を狙っている人、信用のおけない人、興味本位の人から、諸事項のプライバシーを守りたい。

  • 家族事業の譲渡やその後の存続について計画したい。

これら様々な関心事やその他の気になる事柄について、計画性をもった対策を立てるためにエステート・プランニングを専門とする弁護士とご相談することをお勧めします。

エステート・プランニング 基本事項

綿密なエステート・プランとは、あなたが不能に陥った場合に、あなたの医療上の判断や資産管理などについての事前の手配をし、また、他界する前、あるいは他界した後に備えて、あなたの資産管理や資産譲渡ができるものを言います。

また、生前中に、あなたが判断不能に陥った場合や、資産を自己管理できなくなった場合に備えて、事前医療介護指示書(Advance Health Care Directive)を用意することができます。その指示書によって、事前に指名した方にあなたの医療介護に関する判断を任せることができます。また、あなたが判断不能になった後も、継続的に効力を持たせる委任状(a Durable Power of Attorney) を用意することにより、判断不能になった場合に、事前に指名した方にあなたの資産や不動産の管理を任せることができます。

他界する前、あるいは他界した後に行う、資産や不動産の譲渡は、遺言書(will)、または遺言書と信託(a will and a trust)によって行われます。(注:資産譲渡のその他の方法については追ってご説明します。)

プロベート:基本的な説明

プロベートは、譲渡人の資産や不動産(プロベート財産)を確認し、債権者への負債を支払い、正規の受益人を確認し、残りの財産の一部、またはすべてを受益人に配分する手続きを含みます。

遺言書が無いとどうなるか?

もし、あなたが、遺言書を作成しないまま他界した場合、カリフォルニア州法に従って相続人を決定します。婚姻している場合、あなたと配偶者が所有していた共有財産の全ての所有権は、配偶者が譲り受ける事になります。また、配偶者は、あなたの個別の財産の一部を相続し、残りの財産は、子供、孫、両親、姉妹、兄弟、甥、姪の関係にある者、あるいは、その他の近い親族へ配分されることになります。

プロベートの利点:

  • 法廷による監視と最終的な配分を行う。

  • 終局的手続き

プロベートの不利な点:

  • プロベートにかかる料金や費用が多大(下記をご覧下さい。)。トラスト財産を管理するための費用と比べて高くなります。

  • プロベート手続きにかかる時間は、平均6ヶ月から1年かかります。しかし、場合によってはそれより簡単な場合や複雑な場合があり、それによってかかる時間も変わってきます。

  • プロベート手続きを経るとすべての情報が公開情報となるために、プライバシーを守る事ができません。従って、遺言書、資産、その他プロベート裁判に申請された全ての情報が公開情報の対象となります。

プロベートにかかる費用

プロベートにかかる費用は、譲渡人の遺言執行者と遺言執行者の弁護士にかかる費用になります。

カリフォルニア州では、プロベート財産の総資産額に対するパーセンテージで算出されます。総プロベート資産額は、財産に対する負債額を差し引く前の総額を指します。

最初の $100,000

4% =

$4,000

次の $100,000

3% =

$3,000

次の $800,000

2% =

$16,000

次の $9,000,000

1% =

$90,000

次の $15,000,000

0.5% =

$75,000

プロベート総資産額は、負債額を支払う前の財産の総額を指します。例えば、市場価格で $1,000,000の価値がある住宅で、まだ $1,000,000の住宅ローンがあるとします。その場合、この住宅がプロベート手続きを経ることになると、プロベート費用は、遺言執行者に対して $23,000、遺言執行者の弁護士に対して$23,000の費用がかかり、合わせて$46,000のプロベート費用が発生する事になります。

プロベートを回避するための方法

法的手続きや契約などで、あなたが他界する時に、自動的に財産が譲渡されるように手続きがされている場合、プロベートの対象とはなりません。あなたが逝去することがきっかけとなるため、他界時に受益人は財産を所有することになります。プロベート手続きを通さない遺産譲渡の例としては、以下のようなものがあります。

  • 撤回可能生前信託(Revocable Trusts)

  • 生存者へ帰属権のある共有不動財産(Joint tenancy with a right of survivorship)

  • 夫婦共有財産 (Community property with a right of survivorship):既婚している場合のみ。

  • 他界時に支払われるアカウント(“Pay on Death” accounts)

  • 譲渡人の信託以外の受益人を指定している保険 (Insurance policy with a named beneficiary that is not the decedent’s estate)

  • 譲渡人の信託以外の受益人を指定している退職金プラン (IRA, 401k)

  • 生前中に贈与されたもの。

プロベートを回避する意味

プロベートを回避するということは、高額で長期に渡る手続きや、プライバシーが無いなどのプロベートにまつわる様々な不利な点を回避することになります。しかし、プロベートを回避するといっても、税金も回避できるとは限りません。相続税、贈与税、その他の譲渡税など、プロベート手続きを行うか行わないかに拘らず、これらの税対策を考慮する必要があります。

 

連邦レベルの相続税、贈与税

米国の連邦レベルの相続税・贈与税法は、米国在住者が生前中、あるいは他界時に一定額の資産を第三者へ譲渡する事を認めています。(金額は毎年変更されます。以下をご参考下さい。)一般的に、日本では相続人に納税義務がありますが、米国では被相続人(他界した人)の資産から相続税が支払われます。これまで10余年間、当事者が他界した年度により贈与税と相続税の免除額が設定されていました。

相続税と贈与税の免除額は、2001年から2012年までは毎年大きな変動がありました。

  • 2001年から2010年の間は、免除額が毎年の様に変わりました。

2001年の連邦政府の税法改正により、2001年から2010年の間は、相続税の免除額が毎年上がり、2010年には一旦相続税と贈与税が廃止されるという法律が可決された。例えば、2001年の相続税免除額は100万ドルでしたが、2009年の免除額は350万ドルでした。しかしながら、2010年12月に、新しい税法改革が可決され、一旦廃止された2010年の相続税もその改正により、結局500万ドルのみが免除の対象になるという風に改正されました。ただし、キャピタル・ゲインを繰越すことにより相続税を避ける方法も組み込まれていました。

  • 2010年から2012年は、相続税と贈与税が合計 $5 million まで免除されました。税率の最大率は35%でした。

2013年以降は落着く見込みです。

2013年以降の相続税と贈与税の説明:

贈与税:

2013年1月の税法改正により、2013年中は米国在住者は生前中に総額で525万ドルを贈与税の対象とならずに贈与することができる。贈与税の税率は、2013年から最高40%になりました。

相続税:

2013年1月の税法改正により、2013年中は相続税の免除額は525万ドル、525万ドル以上の資産に対する税率は最高40%となりました。また、結婚している場合は一人の配偶者が二人分の免除額を応用できるので、夫婦で合計1,050万ドルまでの相続を免除できる様になりました。

世代を超えた譲渡に関する譲渡税

 非相続人と相続人の間に37.5歳以上の年齢差が有る場合は、世代を超えた贈与や相続税を対象とした譲渡税が適用される可能性もある。2013年1月の税法改正により、2013年中はGSTの免除額も512万ドル、税率が40%となりました。

詳細は、エステート・プランニングを専門とする弁護士にご相談下さい。

非在住者の場合の免除対象額:要注意

米国在住者と見なされない当事者が他界した場合は、免除対象額が6万ドル相当で、金額が極端に低いので要注意です。このため、短期滞在の日本人が個人名義で米国の不動産を購入したり、銀行口座を設ける場合、6万ドルを超える資産は相続税の対象となります(相続税の計算上、非在住者の場合は、米国資産だけが対象となりますが、在住者の場合は全世界にある総資産が対象となります)。

米国に長年滞在後、日本に帰国する際は米国の個人資産も処分すべきです。例え永住権を取得していても、日本での生活日数が多い場合、相続税上、非在住者と見なされ、6万ドル以上の遺産相続は多額の相続税を取られる可能性があるからです。

また、日本に帰国する場合は(市民権、あるいは永住権に対する)放棄情報申告書を米国税務局に提出することになっています。高所得者(過去5年の平均所得が145千ドルを超える)、あるいは全世界に200万ドル以上の資産を所有する人、または過去5年の間、連邦政府への税金の申請を怠っていた場合は、一定の免除額以上の世界中の資産 に対して所得税が発生するので要注意です。

例外:贈与税非課税対象額に含まれない資産の譲渡

米国市民、または永住権保持者は、前述の贈与税非課税対象額に含まれないように(あるいは、その非課税対象額を下げずに)一定額を譲渡する事ができます。それに含まれる例は、以下の通りです。

年間贈与税免除額:      米国市民、あるいは永住権保持者は、年間、最高$13,000(2011年現在)まで課税対象とならず、また申告義務の対象とならずに、一人の方に贈与することができます。この基準額は、年毎に設定されますので、毎年確認する必要があります。また、米国市民または永住権保持者は、1年間で一人の方に贈与する額が、年間の贈与税非課税対象額を超えない限り、何人の人に贈与しても贈与税は、発生しません。

夫婦間贈与の控除  結婚している米国市民の夫婦間では、無制限の非課税対象の贈与をお互いに与えることができます。この無制限の夫婦間控除は、米国市民では無い配偶者や、同性のカップルの間では、認められません。(連邦法は、同性の夫婦を認めていません。)

学費や医療費の直接支払い  教育機関に直接支払う学費や、医療機関に直接支払う医療費は、「贈与」の定義からは除外されます。第三者の負債を肩代わりすることは、通常、贈与とみなされますが、前述のような教育費や医療費の場合は、その限りではありません。詳細については、エステート・プランニング専門の弁護士にご相談下さい。

慈善的寄付金の控除  認可されている慈善団体への寄付金として贈与を行う場合は、寄付金全額が控除の対象となります。この場合、贈与税非課税対象額に変更ありません。

この記事に記載されている内容は、一般的な事実を述べたもので特定のケースに対するアドバイスではありません。個々の財産相続や税金対策に関する詳細については、エステート・プランニング専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

グリーンカード・アメリカ市民権を捨てる方法

移民局を通しての手続き:

グリーンカードを放棄する方法:

移民局、または在外公館領事部にグリーンカードを返却し、FormI-407(永住権放棄報告書)を提出した時点で税法上も永住権放棄が認められて、同日以降、

非移住外国人となる。

市民権を捨てる方法:

在外公館領事部に出向き、市民権放棄宣言書(DS-4080)を提出する。

税務局(IRS)を通しての手続き:

在外公館領事部にグリーンカード、あるいは市民権を返却した後、次にForm8854(放棄情報申告書)を米国税務局に提出する義務がある。この書類上、当事者が下記の条件を満たす場合は、放棄した前日に世界中の資産を公正市場価格(FMV)で処分したという扱いになり、所得税が発生する。

過去15年の間、8年間はグリーンカード所持者であった場合:

  • 過去5年の平均所得に対する税金の支払いが$155K(2013年の時点で)を超える場合。

  • $2,000,000以上の資産を持っている場合(全世界の資産を含む)。

  • または過去5年の間、連邦政府への税金の申請を怠っていた場合。

$668,000(2013年の時点で)は免除されるがその他全資産に対して所得税が発生する。また、自宅を処分した場合は、$250,000までの利益が免除される。

また、放棄後10年以内に高額資産家の死亡年度に、米国滞在日数が30日超であった場合、全世界遺産が米国遺産税、贈与税の対象になる。ただし、仕事の関係でアメリカに滞在した場合は、60日間までの滞在までは免除される場合もある。

* この記事の内容は一般の情報として提供されており、特定の案件に対する法的アドバイスではない。各個人の状況については、専門の弁護士に相談するべきである。また、アメリカ合衆国財務省の規制に基づき、税法に関するペナルティーを回避する目的で、この記事の内容を使用するべきではない。

 

判断不能に陥った場合に備えた人生計画

事前医療介護指示書(アドバンス・ヘルス・ケア・ディレクテブAdvance Health Care Directive)

将来、医療上の選択について自分の判断能力がなくなった時に備えて、医療処置に関する事前の自分の希望を、自分の指名した代理人が医師に伝えるための大切な書類です。

専門用語の意味

  • Advance Health Care Directive(事前医療介護指示書): 様々な医療状況を想定し、それぞれの状況で自分がどのような医療介護措置や延命処置を望むかを事前に指定し、また自分が判断できない場合に備えて自分の代わりに医療上の判断を代行する代理人を事前に指名する法的書類。

  • Principal(当事者): アドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブを用意する当事者。

  • Health Care Agent(医療介護上の代理人):当事者に代わり医療上の判断を下す代理人で当事者が、アドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブで指名する。

  • Incapacity(不能): 当事者が医療介護に関する判断を下せない状態、または、どのような医療処置を望むか意思表示ができない状態。通常見られる状態としては、独立した判断を下せることができない制定法上の意識不明の状態や精神状態などがあります。

効力を発揮する期間

アドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブは、当事者が指定する時点で効力を発揮します。例えば、ディレクティブを作成して即時に効力を発揮するよう選択できますし、自分が将来独立した判断ができなくなった時点(自分の主治医、または医療処置を行っている医者が判断する)で効力を持たせることもできます。また、指定する特定の期間に効力を発揮するように設定する(例えば、重要な手術日に効力を発揮し、6ヶ月後に終了するなど)ことも可能です。このアドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブは、当事者の意思によっていつでも撤回、または変更可能です。

カリフォルニア州制定法上の書式 (California Statutory Form)

このマニュアルに添付してある制定法上のアドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブは、カリフォルニア州法で規定されている条項を最低盛り込んだ定型の書式です。この書式をご利用して、アドバンス・ヘルス・ケア・ディレクティブを作成することも可能ですが、個々のご意向を反映するディレクティブを作成するためには、エステート・プランニング専門の弁護士にご相談下さい。

 

委任状(Power of Attorney)

当事者が、財産管理や財務処理を自分で管理することができなくなった場合に備えて、事前に代理人に代行してもらいたい執行内容を書面に表し、代理人に委任するための法的書類です。

当事者は、代理人にどのような権限を与えるかを明確に定義し、代理人が代行すべき内容を決定します。例えば、当事者の住宅の売却を行う際の最終手続き(クロージング)を任せるなど、代理人の行為を特定の執行内容に限定することができます。または、代理人にすべての権限を委任することも可能です。つまり、代理人が当事者になり代わり、当事者の様々な財産を当事者の権限と同じ範囲で、売買したり手続きをしたりすることができます。この委任状が無い場合、第三者が、当事者の代理としてその利益を代表するためには、法廷の認可を受ける必要があります。

また、当事者が不能になった場合でも効力を持たせることができる委任状(デュラブル・パワー・オブ・アトーニー)もあります。

専門用語の意味

  • Durable Power of Attorney(当事者が判断不能の場合でも有効な委任状):当事者の権利を代行する特定の代理人を指名する法的委任状で、当事者が不能になった場合でも有効となります。

  • Principal(当事者): デュラブル・パワー・オブ・アトーニーを作成する本人。

  • Attorney-in-Fact(代理人): 当事者の指定する期間、場所、執行内容など、デュラブル・パワー・オブ・アトーニーに記載されている諸事項を、当事者の代理人として遂行する権限を持つ人で、事前に当事者が指名します。自分の代理人として信頼のおける方、どなたでも指名する事ができます。(代理人は、弁護士である必要はありません。)

  • Incapacity(不能): 当事者が医療介護に関する判断を下せない状態、またはどのような医療処置を望むか意思表示ができない状態。通常見られる状態としては、独立した判断を下せることができない制定法上の意識不明の状態や精神状態などがあります。

効力を発揮する期間

デュラブル・パワー・オブ・アトーニー(当事者不能の場合でも有効な委任状)は、あなたが指定する時点で効力を発揮します。例えば、委任状を作成して即時に効力を発揮させることも可能ですし、自分が独立した判断ができない不能な状態に陥った時に効力を発揮する(自分の主治医、または医療処置を行っている医者が判断する)こともできます。また、指定する期間に効力を発揮するように設定する(例えば、海外旅行にでかけている間に効力を発揮するなど)ことも可能です。このデュラブル・パワー・オブ・アトーニーは、書面で撤回通知や修正版を自分のデュラブル・パワー・オブ・アトーニーに提出すれば、いつでも撤回や変更が可能です。(第三者に撤回通知の写しなどを預けることも賢明です。)

 

資産と不動産の譲渡

遺言書 (Last Will & Testament)

遺言書は、検認資産を自分の指定する方法で、受益人(相続人)に財産配分を指示する法的書類です。その指示は、財産配分をするか、信託に入れるかなどの選択があります。もし、未成年の子供がいる場合は、あなたが他界した後に、その子供が18歳になるまで、後見人を指名する事ができます。遺言書は、状況によって複雑になる場合もありますが、それぞれの特別な状況に合わせて配分方法や税金面での特別な指示などをそれぞれの目的に沿って作成します。

専門用語の意味:

  • Will(遺言書):他界時に自分の資産の処分方法を指示する法的書類です。 遺言書の法的効力は、それぞれの州法により決定されます。

  • Testator(遺言者): 遺言書を作成する当事者。

  • Decedent(非相続人): 他界した人(この場合、他界した遺言者を指す)。

  • Probate estate (検認資産): 通常、他界時に所有しているすべての資産の事を指します。それには、不動産、銀行口座、自動車、個人資産、その他所有物

  • Beneficiary (相続人):遺言者の検認資産の一部またはすべてを相続する人、または団体。遺言者が指名します。

  • Executor( 遺言執行人 ): 遺言書に指名してある執行者(個人または、団体どちらでも選択可能)は、財産を収集し管理します。その財産からこれまでの負債や実費、税金等を支払った後、法廷で認められた手続きに沿って、財産を遺言書の指示通りに相続人へ分配します。遺言執行者は、重大な責任を持ち、遺言書の執行に大きな役割を持つため、人選には注意を要します。

遺言書のみでは、検認資産以外の資産を譲渡する事はできません。例えば、共同に所有している資産のうち、法や契約に従って自動的に共同所有をしている相手へその所有権が移行する場合があります。それには、生存者へ権利の帰属のある共有財産、他界時で支払いを受けるアカウント、生命保険、退職金などが含まれます。

効力を発揮する期間

遺言書は、遺言者が他界した時点で有効となります。遺言者は、生前中いつでも遺言書の修正や撤回、書き換えなどを規定に従った書面にて行う事ができます。

プロベート(検認裁判)

プロベートは、遺言書が法に照らし合わせて有効かどうか、また、対象となる資産の配分を行うための最終的な指示書であるかどうかを検認する手続きです。通常は、あなたの資産がプロベート手続きを踏まなければならない場合(“goes through probate”)、 あなたの遺言書は、プロベート・コート(検認裁判所)で検認を受けることになります。 あなたの遺言執行人が明らかにされ、あなたが他界した時に所有していた資産や不動産が確認され、負債があれば、資産から支払いを行います。その後の残った資産や不動産を遺言書の指示通りに相続人に配分することになります。

生前信託(リビング・トラスト)

生前信託は、プロベートの手続を通さず、死亡時に財産を効率良く相続する方法です。通常、受託者は、譲渡人の指示に従って(普通は譲渡人の利益になるように)、トラストの資産を管理する役割を持ちます。受託者は、受益人の代わりにトラスト資産を所有し管理します。もし、受託者が、譲渡人と同一人物である場合、受託者/譲渡人が他界した時に、継承受託者がトラストの指示に従い、どの資産がどの受益人に相続されるのか、また何時、どのような手続きを踏んで配分されるのかを確認した上で、それらを実行に移します。撤回可能生前信託は、財産の管理や配分がし易くなっていますが、撤回可能信託は、それだけでは相続税を回避することはできません。トラスト・エステート資産は、通常、あなたの生前にトラストに移行されるべきです。

専門用語の意味

  • Trust(信託): トラストを設定するための法的書類で、独立した法的媒体として認められ、トラストに委託されている財産の管理や配分を行う事ができます。トラストは、撤回可能なトラストか、撤回不可能なトラストかに分かれます。撤回可能なトラストは、通常、(i) 当事者の生前中に設定されます。 (ii) 当事者の意思でいつでも修正や撤回する事ができます。撤回不可能なトラストは、永久性を持つトラストで、より複雑な課税面での目的を達成するために設立されます。詳細は、エステート・プランニング専門の弁護士にお尋ね下さい。

  • Trustor/Grantor/Settlor(信託設定者/譲渡人/信託設定者):  トラストを設定する当事者を指します。

  • Trust Estate(信託財産):  トラスト名義(“held in the Trust”)のすべての財産を指します。財産は、トラストの受託者に委託してトラストに移行されます。

  • Beneficiary(受益人):  当事者の信託財産の一部、または、そのすべてを相続する個人、または、団体で、当事者が指名します。

  • Trustee(受託者):  トラストの指示を実行に移す人で、当事者が指名します。撤回可能トラストの場合、通常、当初の受託者は、譲渡人と同一です。

  • Successor Trustee(継承受託者):  受託者が、他界したり、その任務を実行に移す事ができない場合に、継承して手続きを行う受託者で、当事者が事前に指名します。

効力を発揮する期間

撤回可能なトラストは、執行時(公証人の前で署名して、公証手続きを行う)に効力を発揮します。譲渡人が、規定に従った書面(修正書、撤回書)による手続きを行えば、いつでも修正、撤回する事が可能です。どの時点でどのような手続きを経て失効するかは、そのトラストの指示によって決定されます。

 

永野 綾子弁護士

カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)で法律学を専攻、学士号(B.A.)を取得後、ニューヨークのフォーダム・ロー・スクール(Fordham University School of Law)で法学博士号(J.D.:Doctor of Jurisprudence)、そして、サンフランシスコのゴールデン・ゲート大学で税法の法学修士号(LL.M.)を取得。2001年にカリフォルニア州バークレーで永野法律事務所を開設し、移民法、会社法、エステート・プランニングの分野で活躍してきた。2010年から翠(みどり)法律事務所に所属。現在、移民法と会社法、エステート・プランニングを専門としている。永野弁護士はカリフォルニア州とニューヨーク州の公認弁護士であり、 野弁護士はカリフォルニア州とニューヨーク州の公認弁護士であり、非営利団体組織を通して個人援助の奉仕活動をしてきた長い経歴を持つ。

永野弁護士は2007年から2011年まで「米国移民法弁護士協会(AILA)」、「北カリフォルニア州部」の議員を勤め、2009年から2013年2月までサンフランシスコ、日本人町の「のびる会」の理事長を務めた。また、2010年11月までは、サンフランシスコ日本人町の「気持会」、並び「Hopalong」と言う動物救助団体の理事を務めていた。

法律や国際ビジネス、ハイテク産業における経験も含め、様々な日米の企業や団体、個人の顧問弁護士として数多くの実績を上げている。

電話番号                      (510)548-1100

電子メールアドレス            info@midorilaw.com

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この記事に記載されている内容は、一般的な事実を述べたもので特定のケースに対するアドバイスではありません。個々の財産相続や税金対策に関する詳細については、エステート・プランニング専門の弁護士に相談されることをお勧めします。また、アメリカ合衆国財務省の規制に基づき、税法に関するペナルティーを回避する目的で、この記事の内容を使用するべきではない。